トイ・ストーリー4が「最悪」と言われるわけ
先日、トイ・ストーリー4を観に行った。
観終わった後、他の人がどんな感想を持ったのか気になってTwitterで検索した。
検索欄に「トイストーリー4」と打つと出てくる候補は「トイストーリー4 最悪」。
散々な言われようである。
事前に「賛否両論」「シリーズを好きだった人ほどショックを受ける」という評判は聞いていたので、なんとなく結末を予想していた。
予想通りだった。あらためて調べた感想も予想通り。
先に私の感想を述べると、「意図はわかるし受け容れたいけどやっぱり寂しい。モヤモヤもする。」といった感じ。
「最悪」と言いたくなる人の気持ちもわかった。
ただ、「最悪」と感じる理由はさまざまあるなと思ったので、私なりに考察してみる。
※思いっきりネタバレです。観てない人は見ないでね。
1.ウッディの選択が気に食わない
トイストーリー4の何が最悪かって、過去作を見返してももう感動できないところよ。
— t2 (@FunnyBunny_jpn) 2019年7月16日
ウッディーは飽きられて、大事にされず
持ち主と仲間を裏切って自分勝手に去っていく。
仲間を見捨てない?
いつもそばにいてくれる?
忠誠心!(笑)
俺がついてるぜ(笑)
観なかったことにしたい、完全に汚染された。
ウッディはシリーズを通して、「子供の持ち物」であることにこだわっていた。そして、おもちゃ仲間、友達と一緒にいることを望んでいた。それなのに、子供を捨て友達を捨てた!
という感想。
これについては、Twitterでtets(@t2ott)さんが解説している。
トイストーリー4をみました
— tets (@t2ott) 2019年7月19日
ウッディの最後の選択に違和感がある、最悪、ひどい、納得できない
という人へ
こういうことなのかな?という考察と感想
めちゃ長いです
めちゃネタバレしてます#トイストーリー4 #トイストーリー4最高 pic.twitter.com/nQkArdLlgn
ウッディは3で、自分の生きかたの理念を決めた。
これまでの「持ち主が手放すまで、例えどんな扱いをされようが持ち主の元を離れない」という考えかたを変えた。
「自分を必要とする子供に寄り添う」。今回もその理念に沿っての行動だったのだと。
細かくウッディの思いを考察するとそういった解釈になるし、制作側の意図もきっとそうだろう。
しかしまぁ、今作で私は、ウッディは単に「この先ボニーと共にいても未来が見えないとわかった。仕方が無いので外に出よう」という「やむを得ずの」選択をしているように見えた。
だって、ウッディは特に外界に憧れてはいなさそうだったんだもの。
ボーがいくら今の生活の楽しさを語っても、あまり理解できない様子だった。
フォーキーを助けようとアンティークショップで奮闘しているときも足でまといで、外界で生きることが向いてなさそうと感じさせる。
だからきっと、「え?そっちの選択で大丈夫なの?」と感じるのだろう。
今回の選択は、前向きには到底見えないのだ。
「外界で新しい生きかたをしたい」というポジティブな選択ではなく、
「ボニーといても存在意義がないと自覚した」「しがみついても未来がないから去る」というネガティブな選択。(実際は違うんだろうけどそう見えてしまう)
その上で、「寂しさ」がやはり強い。これは完全にこちら側のエゴで、ウッディに対しての願望。
ずっと仲間と一緒にいて欲しかった。
ずっとおもちゃたちのリーダーでいて欲しかった。
だってそれが、我々が幼い頃から見てきた「ウッディ像」だから。
ウッディの人生なんだから今回の選択を受け容れたいけど、それでもやっぱり寂しいし悲しい。本当にウッディはそれで幸せなの?
というファンの感情である。
これまでのウッディを愛してるからこそしんどいよね。
2.ボニーのことが許せない
トイストーリー4見たけど悲しくてたまらんかった 最悪って評価も分かる
— かえで (@sk_3019n) 2019年8月14日
3では、アンディはウッディを大学に連れていこうとしてて
でもボニーがウッディを欲しがったからアンディは
「ウッディのこと大事にしてね」って譲ってあげたのに 扱い方とかアンディとの約束を守ってないことがなにより腹立った
いいかお前ら誰がなんと言おうがトイストーリーは3で完結した。4なんて存在しないんだ。存在しないし2度と見ねぇ。絶対にもう4は見ねぇ!最悪だボニー俺はお前を許さねぇ。3は神やけど、ボニーのシーンは舌打ちしてしまいそうや。
— シラキ・リ・スタート〜エ・リート〜 (@die_shiraki) 2019年8月9日
実は「最悪」と言っている人の大半がこっちを思っているのではないだろうか。
トイ・ストーリー3で、アンディはボニーを信頼して、「ボニーならばウッディを大切にしてくれるだろう」と信じてウッディを託したのだ。
それなのに。
本当はアンディはウッディを大学に連れていこうとしていた。
だけど、「ウッディにとって遊んでもらえることが幸せだ」という想いからウッディを手放した。ウッディも、1人でアンディについて行くのではなくおもちゃの友達たちと一緒にいることを選んだのだ。
その選択に我々は心を打たれたのだ。
その選択が、ウッディにとって、アンディにとって、ほかのおもちゃにとって最善だったのだと納得した。
しかし今作では、その選択が結果として「うまくいかなかった」ことが示されてしまったのだ。
あの選択は最善ではなかった。
だったら、アンディについて行ったほうが良かったんではないか?どうせ友達と別れるのならば、大好きなアンディとずっと一緒にいたほうが。
そう思ってしまうのである。
だから、「3が台無しになった」と言われている。
正直、ボニーの年代の子供がおもちゃに飽きるなんて普通のことだ。ボニーのことは責められない。ただその「子供の残酷さ」への嫌悪感は強い。
3で我々は「この子ならウッディを大切にしてくれる」と思ったから。それが裏切られたモヤモヤ感、怒りは大きいのである。
あとこれは個人的な感想だけど、この調子だと残ったほかのおもちゃも近い将来ボニーに飽きられるよね?バズやジェシーさえも。
そしたらどうなるんだろうっていう怖さすごい。
みんな1人ずつ独立していくのだろうか...バラバラだ。
フォーキーとか絶対捨てられるだろ。...ゴミ?
3.アンディが神すぎる
トイストーリー4観た雑な感想
— ᴑ‿ゝᴑ の瞳@千景 (@mikurube_kara) 2019年8月12日
賛否両論出てもおかしくないしボニーより
アンディが良かったて思ってしまった
最悪ではなく微妙だった....
「2.ボニーのことが許せない」と被るが、アンディがやっぱり最高の持ち主すぎた。アンディは超えられん。てかウッディもアンディをめちゃくちゃ引きずってるし...。
3でウッディは、アンディと爽やかに別れて前向きにボニーを新たな持ち主とした。
なのに今作でのウッディは、アンディの思い出を語りボニーのことをアンディと言い間違える始末。
「元カノを引きずりまくっている男」を見ているようだった。
もちろんそれは、ボニーに飽きられてしまった現在だからこそなんだと思う。
ボニーに引き継がれた当初は、アンディとの過去は過去としてボニーとの現在を楽しんでいたはず。
3の最後はあんなに爽やかだったのに、現在はこんなにどんよりした感情を抱えてしまっているのか...という残念さ。
だからこそ先ほど述べた通り「3での選択は最善ではなかったんだ」という残念さが強く残る。
また個人的な感想だけど、今後アンディが大学から実家に遊びに来てボニーの様子を見に行くことがあったとする。
そのときにそこにウッディだけいなかったらさぞかし残念だろうなぁ。それを思うといたたまれない。
しかもボニーに聞いても「わからない」「気がついたらなくなってた」なーんて言われるんでしょ...。
4.バズのキャラ崩壊
まあ確かにトイストーリーに全く思い入れがない人は良作やと思うんかもね
— マーリンを5枚抜きするまくまくま (@kumazoumushi) 2019年8月16日
私はなにより3までと全く違うキャラ崩壊が許せなかった
バズはあそこで絶対ウッディについてくと思うんだよ、内なる声とかじゃなくて相棒なら助ける
4を見て、「あれ?バズってこんなポンコツだったっけ?」と思った。
なんだかもっと頼もしくて、ウッディを支える存在だった気がするんだけど。
これについては、私はそこまでトイ・ストーリーキャラに造詣が深くないのでなんとも言えない。(ディズニー全般好きだけどトイ・ストーリーにはそこまで深入りしていない)
バズがウッディを支えようと尽力してるのはすごく見えたけど、
ウッディは結局バズに頼らないままだったしバズはなんだかポンコツで、これでお別れか...という残念さを感じる人も多そう。
5.別れがあっさり
トイ・ストーリー4を観てきた
— お蓮(oren) (@or1585en) 2019年7月14日
決してつまらなくはなかったけれど、ウッディの決断や、それをあっさり受け入れてしまうベテランオモチャ達(そもそも存在が薄すぎる)に違和感があった
なんとなく皆らしくない
大体ボニーもひどい
…と思ったけど現実の子供ってこんなものよね
アンディ悲しむだろうなあ pic.twitter.com/GpfiWg1DFk
確かにあっさりではあった。基本的にウッディは今回完全に単独行動だったので、他のおもちゃたちからしたら急な独立だっただろう。
それまでのウッディの不遇を見ていたからすべてを察して送り出したんだろうけど、それにしてもねぇ...。
3でも幼稚園に行くみんなとウッディがお別れするじゃん。そのときにブルズアイがついてきちゃうみたいなのとか心打たれたんだけど、そういうのすらなかったから物足りない感はぬぐえない。
4はウッディと他のおもちゃたちとの絆がほぼ描かれていないからこそ、拍子抜けしてしまった。
【総括】
結局、我々が見たかったのは「仲間思いで持ち主に忠実なウッディ」「素敵な子供から大切にされる幸せなおもちゃたち」なのだ。それを期待して観に行ったのに逆の結末に行くのだから、期待への不一致が生まれた。
散見される「映画としては素晴らしいがトイ・ストーリーでやる必要はない」という意見がそれだろう。
ピクサーは最近、「生き方の多様性」に焦点を当てた作品を作りがちだ。今作については「カーズ3」と比較して語ることもすべきと思う。長くなるのでここでは言及しないが。
トイ・ストーリー3においてもおもちゃの生き方が大きなテーマだったが、それを4まで持ち越さなくてよかったのでは?とは私も思う。
見たくない未来まで描かれてしまった感覚。夢を見せてくれよディズニー...。
今後は、アンディのもとにいた時代の番外編的ななストーリーだけ観たいなとすら思う。
いい映画を作っていくためにはそうはいかないんだろうけど。
シリーズを続けていくなら深いテーマを持たなければならない。このテーマをトイストーリーでやってしまうところがディズニーの凄いところだと思う。
1つ言えるのは、「最悪」と言っている人はただ悲しいだけなのだ。
ウッディを、バズを、アンディを、ほかのおもちゃたちを、これまでのトイ・ストーリーを愛していたからこそ受け入れたくないファン心。
客観的に見れば「良い作品」であっても、我々の思い入れは相当深く、そう簡単には割り切れないのだ。
蛇足:フォーキーを助けようとするウッディが責められるの納得いかない
ボーに会ってウッディが最初に「フォーキーを助けたい」と言うと、ボーは「あの店に行ってしまったのなら無理。諦めなさい。」と言う。
え?と思った。冷たっ。
ウッディは仲間思いなところがいいんじゃん。それをバッサリって。ヴィランか?
その後もフォーキーを助けることに目がくらんで足でまといになるウッディ。
ほかの仲間がケガしてもフォーキーを助けようと必死で、そんなウッディは「おかしい」と言われる。
そう?
確かにみんなの言う通りフォーキーを世話することに自分の存在意義を求めてこだわりすぎてるところはある。
だけどそれを含めても、命あるおもちゃのフォーキーを助けようと必死になることがそんなにおかしいか?
ボーは自分の羊を助けることには必死なのにフォーキーのことは基本的に助ける気ないし、フォーキーと長く一緒にいるはずのバズたち仲間もフォーキーの名前すら呼ばない。
冷てぇ〜
なんだか悲しいな。